【いしのまき演劇祭対談⑤】作品紹介 コマイぬ「コマイぬよみ芝居『あの日からのみちのく怪談』」

「何か演劇祭っぽい企画を…」といって行われた、いしのまき演劇祭の参加団体の代表による対談。

それぞれの作品の見どころや内容を紹介していただきました。

 

5番目は、「石巻に演劇を届けるために」始まったコマイぬ。

怪談物語の見所は一体どんなところなのでしょうか?

東京での会談では、出演者の菊池さんにお話を伺いました。


語り手:

菊池佳南(コマイぬ)

都甲マリ子(スイミーは まだ 旅の途中)

北村耕治(猫の会)

矢口龍汰(「R」)

 

 

都甲「コマイぬさんは」

 

 

菊池「コマイぬさんはですね」

 

 

都甲「芝原さんにも石巻でしゃべってもらうとは思うんですけど。

なので、かなみんなりに何かお話いただければ」

 

 

菊池「私なりに、コマイぬの話ですよね。

一昨日やっと稽古が始まりまして。

 

今回出演者が芝原さんと、私と、

もうひとり声優のいますごく活躍してる

ガンダムビルドファイターズっていう

ガンダムのガンプラで戦わせるアニメの

主人公役をやってた富樫かずみさんっていう」

 

 

都甲「すごいひとですね」

 

 

菊池「ほんとにすごいひと。

売れてるひとが出演してくれることになりまして。

 

そして音楽はですね、

コマイぬは朗読劇っていうのが恥ずかしいから、よみ芝居って言ってるんですけど(笑)

 

音楽もあって、そちらには横山大地さんっていうギタリストで

元さいたまネクスト・シアターにいたひとなんだけど

いまギタリストのひとと

 

「R」に出てた小牛田出身のかじみなみさん、バイオリニスト。

その5人でやっていきます。

 

あと、ちょっとだけシークレットゲストが…。

 

本人は来ないんですけど

 

みんなが知ってるあの芸人さんがいる予定です」

矢口「怪談って書いてあるの見たらさ、なんか行きたくなるよね」

 

 

 

菊池「でもどうなんだろ。

怖いの嫌いなひとは来ないでしょうけどね」

 

 

 

矢口「でもなかなか

よみ芝居で怪談って

石巻ではないでしょう」

 

 

 

都甲「ないですね」

 

 

 

菊池「あーそっかあ」

 

 

 

矢口「地元の人からすると

それくらい思いきったことやってくれた方が

行こうってなると思うよ」

 

 

 

菊池「あーそっか

それはよかった」

 

 

 

北村「なんかさ、出版イベントがあるんでしょ?

それはなんなの」

 

 

 

菊池「このみちのく怪談って

前にも読ませていただいてるんですけど、

それを出してるのが、仙台の荒蝦夷っていう出版社さんで。

 

たまたま私たちがみちのく怪談読みたいっていうお話をさせてもらったら、

今回、震災にまつわる怪談を集めた本を

荒蝦夷さんで出版されるのですが、

それとたまたまタイミングが一緒だったんですね。

 

で、じゃあ出版時期を合わせるから

一緒にやろうと。

 

今回その本に書いている作家さんが10人いるんですけど

出版記念イベントとして

その作家10人全員が東松島の会場に来るんです」

 

 

 

都甲「全員来るんですか」

 

 

 

菊池「全員来ます」

 

 

 

 

一同「すごいね」

 

 

 

菊池「で、コマイぬの公演の前の時間に

 

いつも作家さんたちがやってるんですけど、

怪談イベントって言って、作家さんが怪談のトークをしたり

自分の作品を読んだりするっていうイベントをやるんです。

 

それは無料なんですけど。

それに合わせてコマイぬが後からやるっていう感じになりまして。

 

そして、どうやら怪談好きっていうひとたち、怪談のファンっていうのが

ある一定数いるらしいんですね。

そういう人たちがいろんなところから東松島に来るんじゃないかと」

 

 

 

都甲「怪談好き」

 

 

 

菊池「そう、だからちょっとね

作家さんたちもまた個性的らしいんですよ

 

ノリノリで着物を着てくるらしいんですね。

うちらがやるよりも作家さんが読んだ方が面白いんじゃないかって思うんですけど

そこはじゃあ作家さんに出来ないことをちゃんとやろう、

 

誠実に芝居をしようっていう感じで」

矢口「震災にまつわるっていうのは

どういう感じになるんですか」

 

 

 

菊池「そうですね、2009年かな

遠野物語からちょうど100年の記念の年に

みちのく怪談プロジェクトっていうのがありまして。

 

それに合わせて

公募で東北にまつわる怪談を集めてコンテストをするっていう催しが

2009年、2010年、2011年とあったんです。

そのコンテストの傑作選っていう本が出ていて。

 

2011年の公募が始まる前に震災があったので、

2011年はやるかやらないかも迷ったと思うんですけど

やることにして集めたら

やっぱり震災に絡んだ怪談話っていうのが

いっぱいあったんですね。

 

それが『震災怪談』といま呼ばれているものなんですけど、

そのなかにはやっぱり実際自分の体験談だったり創作だったり

いろいろ、あと、作家さんが聞き書きというか

そういうのをやってる

そういうものがいっぱいあるんですね。

 

そして、この今回の震災で生まれた怪談たちも

最終的にはやっぱり遠野物語みたいに

みちのく怪談ってものになっていくだろうって言われています。

 

時間がたって100年、200年経てば

そのひとつに過ぎないものになるだろうと。

 

今回そのじゃあ、震災怪談だけを集めた本を作ろうって

荒蝦夷さんで、なったらしいんですね。

 

コマイぬで、夏にやるのに怪談にしようってなって。

出版社に話しに行ったら

実はこういう本が出るってことで

じゃあ、震災怪談だけ集めた本からやろうってなったんです。

 

まあでもいろんな作品があって。

 

作家ご本人が家族亡くされてる、とか

聞き書きをし続けて辛くなっちゃったって作品、とか

いろんなものがあるんですけど。

 

でも、なんか優しいものが多いんですよね。

なんか親しみがあるお化けっていうか。

 

幽霊として出てきている人も

ちょっと前まで、そこに住んでる人だったり、

そこに生活してた人っていう。

 

なんかこう、帰りたいんだよねっていうのとか、

怪談でお化けなんだけど

私たち生きてるひとたちが霊に対する目線が

すごく優しいものが多くて。

 

これがどう受け止められるかってのは

怖いは怖いんですけど。

 

ちょっと前に、タクシー幽霊(注「呼び覚まされる霊性の震災学」(2016.1 新曜社)に掲載され、話題を呼んだ)っていって、流行ったじゃないですか。

それでなんか東京から来た記者が

お化けみてないですかって聞き回ったりとか。

 

地元の人からしたら

そんなの、東京から来た知らない人にいきなりそんな話しないよって感じだけど、

 

でも、実はちゃんと向き合ってくれる、東北の作家さんたちにはしゃべれる、

しゃべりたいことらしくって。

 

だからなんというか、

いろんな風に捉えられるとは思うんですけど

 

去年『親戚の話』をやって

そのあとにも、コマイぬよみ芝居で石巻でいろんなことやってきた上で、

この作品は一緒に共有できるものはあるんじゃないかなって、

石巻の人に聞いてもらいたいなっていうのかあって、

 

これに挑戦することになりました」

矢口「怪談だからこそ、

埋められる穴みたいなものってあるよね。

 

いなくなってしまったけども、

見つかってない人っていうのも、

救いにもなったりするっていうか。

 

俺もタクシーの本を読んでそう思ったし、

ただの怖い話じゃなくなってて

しかもそれが川開きの日にやる(注・コマイぬの公演日は7月30日、翌日の7月31日と8月1日は石巻最大の祭礼「川開き祭り」が行われる)っていうのに

すごく意味を感じる。

 

そしてそのあとに灯籠流しがあって」

 

 

 

菊池「私もそういう風にありたいなあって

思います、ほんとに。

 

怪談ってもともとレクイエム、鎮魂の意味があるんですって。

だから、まさにそれだなって感じがしていて。

 

見つかってない人に対する思いだったり

埋められる部分、物語が埋めてる部分が

信じられたらいいなって思ってます」

 

 

 

 

都甲「ありがとうございます」

 

菊池「演出が不在なんですよね

このコマイぬよみ芝居は」

 

 

 

都甲「ああ、芝原さんと2人で作ってるから」

 

 

 

北村「そうか、演出とか立ててるわけじゃないんだ」

 

 

 

菊池「ないんです。

俳優と音楽隊、ギターとバイオリンで

ここ、こういう音欲しいねとか

こういう風にやりたいねとか

すごく自由に言い合ってつくってるので」

 

 

 

矢口「蔵しっくパークのあの和室のなかで

ギターとバイオリンで怪談でしょ

なんかすげーヤバいよね」

 

 

 

菊池「ぜったいヤバいと思うんですよ」

 

 

 

矢口「しかも川開きの日にやるって…。

うん、すげー観たい」

 

 

 

都甲「蔵しっくパークそんな風に使えるんだって初めて知りました」

 

 

 

菊池「普段は何もないとちっちゃい子がポケモンカードやってたりとか(笑)、

 

いい場所ですよね、蔵しっくパーク」

 

矢口「昔、川開き祭って石巻の夏のお祭りで、

今はあるか分からないけど、お化け屋敷って必ずあったんですよね。

手作り感満載のお化け屋敷なんだけど。

 

外におばちゃんがいて呼び込みしてて、

いわゆるあの感じ、やってて」

 

 

 

菊池「なんか芝原も言ってたかも」

 

 

 

都甲「巨大迷路の話たまに聞きますね」

 

 

 

矢口「そう、小中学生の頃ってやっぱ行っちゃうんですよね、楽しくて。

夏祭りと怖いものってやっぱ相性がいいなあとは思ってて。

 

何回もやって欲しいですこの怪談、夏だからこそ」

 

 

 

菊池「それ夢ですね。

何回もやりたい。

夏といえば、みたいになりたい

夏といえば、コマイぬ怪談、みたいな」

 

 

 

都甲「いいですね、レパートリーで」

 

 

 

北村「白石加代子みたいになればいいんじゃないの」

 

 

 

菊池「いいね、百物語ね。

やりたいやりたい、それ

それ目指そ

白石加代子目指す」

 

 

 

矢口「目指しましょう」

 

 

 

 

菊池「がんばります」